The History Hour

華流ドラマ・海外ドラマの感想や幻想水滸伝のプレイ日記が中心。推しを愛でるのが目的なのでネタバレ満載です☆

【邦画】劇場版 アナウンサーたちの戦争:終わりの見えない戦いに翻弄された人達

2024年8月26日(月)鑑賞 イオンシネマ

2023年製作/113分/G/日本
演出:一木正恵
脚本:倉光泰子
配給:ナカチカピクチャーズ
劇場公開日:2024年8月16日

おすすめ度★★★★
満足度★★★
お一人様向け

ネタバレあり感想

太平洋戦争中のNHKアナウンサー達の姿を追った群像劇。和田信賢アナを中心に、開戦直前から戦後までの彼らの行動や心情を描いている。実話がベースの物語なので、ドキュメンタリー映画に近い。とはいっても、そこには制作者の意図が含まれるので、ここに描かれていることのどこまでが本当でどこからがフィクションなのかはわからない。

 

この物語の中心人物となる和田は、矛盾を抱えた存在だ。反骨精神に溢れているかと思えば、時代に流されていく。そんな自分の姿に気づき悩み苦しむ。人間というものは、己の信条を違えずに突き進むことなどできない。周囲の様々な影響を受けながら生きていくものなのだ。それを体現しているのが和田という男なのだろう。

他にも印象深かったのが館野守男アナ。彼は開戦の第一報をラジオで読み上げた人物だ。それ以来、日本国民の戦意を鼓舞することが、日本のためになるのだと信じ、声を張り上げてきた。だが実際の戦地に赴いた時、彼の信条は崩れ落ちていく。

そしてマニラで命を落とした米良忠麿アナ。米軍機が迫る中、最後まで現地に残る日本人のため放送を続けた。

 

この映画を鑑賞後、まず思ったのは『太平洋戦争とはいったいなんだったのだろう』ということだ。いったい日本軍はこの戦いで何をしようとしていたのだろう。国を守るため、というのはわかる。だが、この戦争の目的をどこに定めていたのかがわからない。

特にインドやマニラでの戦いを見ていて強くそう思った。なぜ日本軍は、これらの国々を占領する必要があったのか。植民地を拡大して、現地を半永久的に支配するつもりだったのか。それとも東南アジアからアメリカ軍を撤退させることで、講和条件を有利に持っていくのが狙いだったのか。

太平洋戦争について詳しい方ならご存知なのかもしれないが、残念ながら私にはこの映画を観ていても日本軍の目的がまったく見えてこなかった。それは当時の日本国民も同じだったのではないだろうか。一般大衆だけではなく、情報を提供する側の人々、アナウンサーも同じだったのではないか。

彼らもまた何が真実で何が偽りなのかわからないまま、大本営が発表する情報をアナウンスし続けた。そのことに疑問を抱くアナウンサーもいれば、それが日本のためになると信じて疑わないアナウンサーもいた。また、戦局を有利にするため、あえて偽りの情報を流すアナウンサーもいた。

いったい当時の日本において、戦争の実態を把握していた人達がどれほどいたことだろう。そしてこの戦争の目的を理解して戦っていた日本人が果たしていたのだろうか。開戦当初の日本には展望があったはずである。それが崩れたあと、終わりの見えない戦いへと突入していった日本の姿がここに描かれている。そしてそれは決して過去の話ではなく、今なお世界中で続いている出来事なのだと思わされた映画だった。

 

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